【今日のタブチ】私が『銀河の一票』だけを見続けている理由――なぜ4月クールドラマは“全滅”したのか

私がテレビ局員時代から続けていることがある。仕事だから当たり前と言えばそうなのだが、毎クールごとに地上波ドラマが入れ替わるたびに、ほとんどの作品を観てそこから“マイチョイス”をふるいにかけてゆく作業だ。
これは、大学教員になったあとも、映像研究、メディア研究のために続けている。

そして、4月クールのドラマだ。そろそろ各作品とも終盤に差し掛かった。今クールの特徴は、“宇宙色”が濃いということ。タイトルが宇宙を喚起させるものはもちろんのこと、宇宙をテーマにしたものや、登場人物が宇宙関連の職業だったりと多彩ではあるが、どれも宇宙に関係している。具体的には、それぞれ『銀河の一票』『サバ缶、宇宙へ行く』『GIFT』などである。
イーロン・マスク氏のスペースXがIPOするからというわけではないと思うが、常々感じていたように、テレビのトレンドというものは偶発的に重なるものだ。

私の今クールドラマの総評は、少々辛口となる。
CGや最新撮影技術などを駆使した、ある種“スケール感”重視の作品が多いが、どれもいまいち感が否めない。“再生”“人生再設計”などの「やり直し」モノが多いイメージだが、これは配信を意識した作品傾向と言っていいだろう。派手な演出や映像構成で話題を呼ぶ、突飛な設定で関心を引く――といった手法は、SNSやネットに共通するものだ。ただしこれは単に似ているという話ではなく、ドラマ自体がSNS的に消費される前提で設計されているという意味で、構造的に近づいていると言ったほうが正確だ。
ただし重要なのは、「配信を意識しているかどうか」という表層の話ではない。むしろ、配信で消費されることを前提に、ドラマの設計そのものが変わっているという点だ。一話ごとに話題化できるフック、瞬時に理解できる記号化されたキャラクター、そして“語りたくなる余白”――これらはすべて、そのために組み込まれた装置と見るべきだ。
しかしその結果、ドラマそのものよりも“装置”が先に立ち、物語としての必然性や人物の感情が後景に退いてしまっている作品が多い。見せ方は巧みでも、巻き込まれる感覚が弱い。

結局今の時点で、最初に観始めたドラマはほぼ全滅

そんななかで、ただ一つ見続けているドラマがある。
『銀河の一票』だ。
最初は、宇宙流行りに便乗した作品かと侮っていたが、そうではなかった。
先日朝日新聞でも特集がされていた。そこで指摘されていたのは、この作品が政治を扱いながら、政策や理念そのものではなく、選挙という“現場”の人間の動きや感情に焦点を当てている点だった。言い換えれば、政治そのものではなく“政治が動くプロセス”を描いている。従来の政治ドラマが掲げてきたテーマの重さを、巧みにずらしているのである。

私がこのドラマを評価する点は、3つある。
1.「政治モノは視聴者の興味を惹かない」という定説を覆していること――知らない“選挙あるある”が満載で飽きさせない。
2.実際の政治家のパロディが満載――「あ、松下洸平の日山流星はあの人ね」など、登場人物に感情移入してしまう。
3.野呂佳代がいい――野呂氏は『なんで私が神説教』でも教師役でいい味を出していたが、特に今ドラマの元教師のスナックママはいい。思わず見入ってしまう。完全に主役を食っている。

あらためて整理すると、これらの評価は朝日新聞の指摘と重なる部分もあるが、焦点はやや異なる。
朝日が構造、すなわち「政治を語らない政治ドラマ」という枠組みに注目しているのに対し、私はその構造を成立させている“見せ方”に惹かれている。構造が新しいというよりも、その構造を違和感なく受け入れさせるテクニックのほうに、いまのテレビの進化を感じる。
1や2はいずれも、重い政治を軽やかに見せるための装置である。そしてこれは、今期の他のドラマが苦戦している要因とも地続きにある。
『銀河の一票』の特徴は、これらの装置が前に出過ぎていないことだ。他の多くの作品が“装置の巧さ”を見せようとして失速しているのに対し、本作はあくまで人間の動きを軸にしている。その一点で、他作品と決定的に異なる。だからこそ、観てしまう。

しかし、考えてみれば、3は私の個人的な好みかもしれないが、1や2はどちらも配信的な文法と無関係ではない。重たいテーマはそのまま提示すると敬遠される。だからこそ、ディテールで引っ張る、パロディで補助する、といった“見せ方”が必要になる。
つまりいまの地上波ドラマは、「配信を気にするかどうか」ではなく、配信と同じ土俵でどう機能するかを問われているのだ。

今期は“宇宙”がキーワードだと書いたが、それは単なる偶然ではないだろう。宇宙、銀河、月夜――そうした遠い言葉を使いながら、実際に描かれているのは極めて地上的で、具体的な人間の営みだ。
この距離の取り方
配信時代に不可欠な“装置”をどう制御して、地上波ならではの“持ち味”を活かせるか。
直接語らず、しかし確実に伝える。
いまのドラマの勝ち筋は、そこにある

「カンテレ」公式HPより

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