【今日のタブチ】冬の霞と夏のネギ、そしてサトちゃん――“何気ない日常”の尊さをかみしめる、2026年2月25日
我が家は坂の上にあるので、駅までは下りで10分少々だが、帰りは上りで13分ほどかかる。この駅までの10分間を「しんどいなぁ」と思っていた頃があった。
特に前職のテレビ局時代は、今になって思えば愚かだったが、“時間に追われたような”せわしない生活をしていて、歩く時間さえ「もったいない」と感じていた。
だが最近は、この駅までの道のりを心地よく感じるようになった。
家を出てすぐ右手に広がる巨大な農園。渋谷から特急で20分ほどの場所とは思えないほど、のどかな風景だ。このギャップが私は好きだ。冬のひんやりとした朝、畑にうっすらとかかる霞の、なんとはかなく美しいことか。夏になれば、ネギの青さが強烈に目に焼き付く。
そして今日も、駅の手前にある薬局の店主と出会う。この店主は経営者であり、管理薬剤師でもある。薬を受け取るときはいつも、窓口で懇切丁寧に対応してくれる。
薬局は病院の開院時間に合わせて9時からの営業だが、店主は毎朝7時半から8時頃には店の前を掃き、ガラスを拭き、サトちゃんを磨いている。丁寧な所作で、同じ景色をきれいに整えていく。その単調だが、“絶やされることのない”繰り返しが、どれほど貴重なものかと実感する瞬間だ。
「サトちゃん」と聞いて、その姿がすぐ浮かぶ人は、きっと私と同年代だろう。佐藤製薬のあのゾウのキャラクターだ。
薬局の前に“守り神”のように鎮座するサトちゃんは、長年の風雪に耐え、ところどころ欠けているが、店主はそれを宝物のように大切にし、毎朝、全身を丁寧に磨き上げる。
私はそんな店主に「おはようございます」と声をかける。すると店主も「おはようございます!」と元気に返してくれる。もう駅は近い。
今日はこの店主に会えるだろうか――そんな小さな期待を胸に、私は駅までの歩みを楽しんでいる。
こんなふうに、日常を「愛おしい」と感じるのは、今日、前職のテレ東時代の2年先輩が亡くなったという知らせを聞いたせいかもしれない。
たった2歳しか違わない。私も、そんな「射程距離」に入ったのだと思うと、日々の何気ない出来事や喜びを、きちんと噛みしめながら生きていかなければ、そう強く思うのだ。
「Wikipedia」HPより


