【今日のタブチ】なぜ起きたのか?ドラマ『ジャンヌの裁き』が予見した現実――検察審査員11人の氏名流出が突きつける「最後の砦」崩壊の不安材料
検察審査員の氏名が流出したという記事を読んだ。これは由々しき問題だ。
私は、テレ東プロデューサー時代に玉木宏氏主演で『ジャンヌの裁き』というドラマを企画した。これは、検察審査会が舞台となったものである。当時、東京高検の黒川弘務元検事長が新聞記者らと賭けマージャンをした問題が世間を騒がせていた。黒川氏は、いったんは賭博罪や収賄罪で告発され、不起訴処分となった。しかし、この件に関して、東京第6検察審査会は審議を行い、賭博は「起訴相当」、収賄は「不起訴相当」との議決を出した。まさに、検察が出した結論に対し、異議を突きつけたのである。
私はこの顛末を知って、「おもしろい!」と思った。それは、検察審査会というのが一般人が無作為に選ばれた11人で構成されているからである。いわば「庶民の声」であり、司法において「最後の砦」のような存在だ。
日本における検察は“絶対権力”を持っている。起訴されてしまえば、それを覆すのは極めて困難である。「有罪率99.9%」と言われるのも、その構造に由来する。一方、不起訴になった案件においても、現実的には再び蒸し返されることは少なく、刑事責任を問うことは容易ではない。
だが、その不可能を可能にすることができるのが、「検察審査会制度」なのである。
ドラマでは、さまざまな事情を抱えた個性豊かな一般人が登場し、時には反目し、時には力を合わせて、検察が下した事案を審議してゆく様を描いた。なかには、検察審査員が自らの身に危険が及ぶことを恐れる場面も描いている。今回の件は、それが決して杞憂ではなかったことを示している。
そして、この制度を確実かつ公平・公正ならしめているのが、「素性の秘匿」である。誰が検察審査員を務めているかということが暴露されてしまうと、当人は自分への影響を気にして不安になるだろうし、実際に危害が及ぶ可能性も否定できない。
だから、私は今回の事件を重要視している。
これは、この制度どころか、日本の司法の根幹そのものを揺るがす大問題である。
漏洩が発覚した山口地検は、審査員への被害は確認されていないとしているが、申立人である告訴側へ送った書面に、11人全員の名前が記されていたというから、当人たちは気が気ではないだろう。しかも、今回は申立人の刑事告訴を嫌疑はないとして、「不起訴相当」と議決している。逆恨みをされる可能性も否定できない。
こういう問題が起こったときに、とかく「被害は出ていない」という結果論だけで物事を収束しようとするきらいがある。だが、この事態を深刻に受け止め、「なぜこんなことが起こったのか」という原因を追究しないとまた同じことが勃発する恐れがあるだろう。
関係各所には、事件をうやむやにせず、原因究明と再発防止に努めてほしい。それが、ひいては我が国の司法制度を守ることにもなるのだ。
「NOVAIST」HPより


