【今日のタブチ】ICC赤根所長制裁で見えた「世間の非難は承知の上」というアメリカの本音・・・世界が見落としている、その”本当の理由”

「ICCの赤根智子所長にアメリカが制裁」
このニュースを聞いても、「ICCって何だっけ?」という人も少なくないかもしれない。
ICCとは国際刑事裁判所(International Criminal Court)のことで、オランダ・ハーグに本部を置く国際機関である。戦争犯罪や人道に対する罪、ジェノサイド(大量虐殺)など、国家ではなく個人の責任を裁くことを目的として設立された。
現在の所長を務めているのが日本人の赤根智子氏である。

問題の発端は、ICCが昨年、イスラエルのネタニヤフ首相らに対して逮捕状を発付したことだった。ICC側はガザでの軍事行動に関連する戦争犯罪の疑いを指摘したが、イスラエルは強く反発した。アメリカもまた、この判断を問題視してきた。
そして今月、トランプ政権は赤根所長らICC関係者に対する制裁を発表した。アメリカ国内にある資産の凍結や、米国金融システムとの取引制限などがその内容である。
当然ながら世界各国から批判の声が上がっている。
ICCは「司法の独立に対する攻撃だ」と反発し、日本政府も「極めて遺憾」「非常に残念」との立場を表明した。世論を見ると、「法の支配への挑戦だ」「国際司法への圧力だ」という論調が目立つ。確かにそうした見方も理解できる。しかし、私が気になったのは、制裁の是非そのものではない。もっと別のことである。

アメリカはなぜ世界中から批判されることが分かっていて、あえてこうした行動に出るのかという点だ。

普通に考えれば得策とは思えない。同盟国である日本との関係にも微妙な影響を与える。ヨーロッパ諸国との摩擦も生む。国際社会から「力による圧力だ」と批判される。
それでもやる。なぜなのか。
私はそこにアメリカという国家の本質が見える気がする。
私たち日本人は、国際機関や国際ルールを比較的重視する感覚に慣れている。しかし、アメリカは少し違う。
アメリカの政治を長く観察していると、「国際協調」よりもさらに上位に置いているものがある。

それは「国家主権」である。

アメリカの立場は一貫している。「アメリカ国民を裁くのはアメリカであって、国際機関ではない」という考え方だ。
実はアメリカはICCそのものに加盟していない。なぜ加盟していないのか。
将来、米軍兵士や政府高官が外国で活動した際、ICCが捜査や訴追を行う可能性を警戒しているからである。つまり今回の制裁は、突然の感情的な行動ではない。
アメリカから見ると、「加盟していない裁判所が、自国や同盟国の指導者を裁こうとしている」という認識なのである。

もちろん、その考え方に賛成するかどうかは別問題だ。

しかし、少なくとも、アメリカの論理は理解しておく必要がある。
興味深いのは、ここに欧州的な発想との違いが現れていることである。
欧州では、「国際法が国家を縛るべきだ」という考え方が比較的強い。
一方のアメリカでは、「国家が国際法を作るのであって、国際法が国家の上に立つべきではない」という感覚が根強い。同じ民主主義国家でも、国際秩序に対する発想が大きく異なるのである。
だから私は今回のニュースを見て、赤根所長個人の問題というよりも、アメリカという国の行動原理を改めて感じた。
世界から批判される。国際世論から非難される。それでも自国の主権や国益が関わると判断すれば実行する。好き嫌いは別にして、それがアメリカという国の特徴であり、強さでもあり、時に世界との摩擦を生む原因でもある。

もちろん、私は今回のアメリカの行いを正当化するつもりはないし、支持をするつもりもない。また、今回の制裁をどう評価するかは読者それぞれだろう。
ただ私は、このニュースを見ながら、赤根所長への制裁そのものよりも、「なぜアメリカはここまで主権にこだわるのか」という点に強い関心を持った。

この事件は、単なる外交問題ではない。
国際法と国家主権。理想と現実。そのせめぎ合いが、非常にわかりやすい形で表れた出来事だったように思う。

「Human Rights Watch」HPより

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