【今日のタブチ】昨日の稿の「誤認」を訂正する――なぜ私は高市首相の「慰霊の日」式典“不在”を前提にしたのか

昨日のブログの稿について、訂正と説明をしておきたい。私の記述には明確な事実認識のズレがあった。高市首相は結果として式典に出席している。それにもかかわらず、私は「不在」を前提に論を組み立ててしまった。この点については、まず率直に詫びたい。

今回の問題は単なる確認不足ではない。どこで判断を誤ったのかを、時系列に沿って明確にしておく必要がある。

まず前提となる事実を整理する。沖縄の「慰霊の日」の追悼式は、6月23日の午前11時50分から正午過ぎにかけて行われる日程である。つまり、一般的な朝刊が読まれる時間帯には、式典そのものがまだ始まっていない。実際、同日朝の段階の報道は、「式典が開催される」「首相が出席する予定」といった、あくまで予定ベースの記述にとどまるものだった

ここまでは事実関係として明確だ。
問題は、その先の私の判断にある。

私は、朝刊の段階でまだ確定していない情報、すなわち「首相が実際に出席したかどうか」を、「出席しないだろう」という方向に補完してしまった。その結果、「不在」という“事実ではない前提”で文章を書いてしまったのである。

なぜ、そのような補完が起きたのか。

一つは、過去の出席状況に関する認識だ。ハンセン病の追悼式においては首相本人の出席は例外的であり、長年にわたって閣僚対応が続いてきた経緯がある。また沖縄の慰霊の日についても、出席は増えてきたとはいえ、常に首相本人が現地にいるとは限らない。こうした「必ずしも出席が前提ではない」という歴史的な運用は、私の意識の中に確かに蓄積されていた。

もう一つは、個々の政治家の行動様式に対する印象の積み重ねである。
私の中には強い先入観があった。軍備強化に積極的な姿勢を示してきた首相が、沖縄の式典の場に立てば、強い反発にさらされることは容易に想像できる。そうした場をあえて避けるのではないか、という見方を、私はあらかじめ織り込んでしまっていたのである。
実際、今回の式典では、首相が演台に向かう際に「戦争反対!」といったヤジが飛び、「沖縄差別をやめろ」「戦争を起こすな」と声を上げる参加者が警備によって退場させられる場面もあった。つまり、私が頭の中で想定していた状況そのものは、根拠のない空想ではなかった。

しかし、問題はそこではない。そのような可能性があることと、現実に出席しないこととはまったく別の次元の話である。私は前者を後者にすり替えてしまった。
どの場を優先し、どの場を相対的に重視しないのか――その判断の傾向は、過去の言動や日程の組み方からある程度は読み取れる。その「傾向」に今回の事例を重ね、「今回も同じ判断になるだろう」と無意識のうちに推測してしまった。

重要なのは、この二つが完全な根拠ゼロではないという点だ。過去のデータや傾向から推論すること自体は、分析の方法としては一般的である。しかし、それはあくまで「可能性の判断」にすぎない。その段階の推測を、確認されていない個別の事実に置き換えてしまえば、それは誤りになる。

今回、私はまさにその順序を取り違えた。
本来は、未確定の情報は未確定のままに置き、確認を待つべきだった。
ところが私は、時間的にまだ確定していない情報を、過去の傾向で埋め、「確定した事実」として扱ってしまった。

言い換えれば、今回の誤認は「情報がなかった」ことではなく、「未確定の情報を、自分の中の物差しで確定させてしまったこと」にある。

これは十分に反省するべき点であり、ここには論者として最も警戒すべき癖が表れている。人は情報が欠けているとき、その空白を埋めようとする。その際に使われるのが経験や印象であり、それ自体は避けがたい。しかし、それをどの段階で“事実”として扱うかは、本来、厳密に区別されなければならない。

今回の私は、その線を越えた。

もちろん、首相がどの式典に出席するのかという問題自体の重要性が損なわれるわけではない。国家の代表がどの場に姿を見せるのか、その選択がどのようなメッセージとして受け取られるのかという問いは、引き続き検討されるべきものだろう。ただし、それを論じるためには、個別の事実を一つひとつ正確に押さえるという前提が不可欠である。

今回の一件は、その基本を外したことに尽きる。
そしてこれは、常日頃私が学生たちに繰り返し述べてきたことでもある。
「自分の常識、固定観念、先入観で物事を考えてはいけない」
であるにもかかわらず、自らがそんな過ちを犯してしまった。恥ずべきことだ。

読者に対しては改めて詫びる。同時に、この判断の経緯そのものを明示しておきたい。誤りの訂正だけではなく、「なぜそう書いてしまったのか」を言語化することもまた、最低限の責任だと考えるからである。

違和感は重要だ。しかしそれは、事実確認の後に残るものでなければならない。その順序を、今回自らの心の中に引き直しておきたい。

「毎日新聞デジタル」より

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