【今日のタブチ】桜美林大学フィールドワーク研究「第二のふるさと」奈留島へ――過去・現在・未来をつなぐ、かくれキリシタンの現場から

授業の合間を縫って、今週末の金曜日から二泊三日で撮影に出る。
行き先は長崎・五島列島奈留島。すっかりここは「第二のふるさと」のような場所になった。島に着けば、港ではかくれキリシタン研究家であり、ご自身もかくれキリシタンの末裔である、柿森和年氏が迎えてくれる。
柿森氏は近年、阿古木古道の整備や巡礼宿建設の中心人物として、クラウドファンディングを立ち上げ、自身の時間と資金を投じながら、この地の信仰文化を未来につなぐ取り組みを続けている。
定宿は民宿「かどもち」。ご夫婦が温かく、海の幸を囲みながら交わす何気ない会話も、今ではこの島で研究を続ける時間の一部になっている。

今回の渡航は、本学・桜美林大学の学内学術研究振興費に採択されたフィールドワーク研究の一環で、2023年から継続してきた「かくれキリシタン研究」の4年目にあたる。

2023年度には、奈留島に伝わる洗礼儀式「お授け」を再現し、失われつつあった儀式の初映像化に成功した。2024年度は、世界で唯一とされる絹のオラショ「今日の御志き」を解読・復元し、その映像化に取り組んだ。2025年度には、クリスマス儀式「お大夜」と、信者の臨終時に唱えられる「最後のオラショ」を記録し、祈りと言葉がどのように継承されてきたのか、その精神的・文化的意味に迫った。これらの成果は、信仰実践の「過去」と「現在」を可視化し、桜美林大学固有の映像人類学的資産として蓄積されつつある

そして2026年度。テーマは「現在」からさらに先、「未来」へと向かう取り組みだ。奈留島で進められている二つのプロジェクト――古道「阿古木古道」の巡礼道化、そして巡礼宿「Albergue San Ignacio(アルベルゲ・サン・イナッショ)」の建設と運営。そのプロセスそのものを記録する。

阿古木古道は、1800年代初頭、禁令期に船廻湾沿いで潜伏キリシタンたちが造った道だ。半世紀以上使われなくなっていた全長約5キロの道のうち、現在は3.3キロが歩けるように整備され、残る1.7キロも島内外のボランティアの協力によって再生が進んでいる。
巡礼宿アルベルゲ・サン・イナッショは、スペインのサンティアゴ巡礼道に点在する巡礼宿をモデルに、日本で初めて本格的に設けられるもので、完成後には日本二十六聖人記念館長でもあるデ・ルカ・レンゾ神父による祝別式も予定されている。単なる宿泊施設ではない。潜伏キリシタンの生活や信仰を体感し、その普遍的な精神性に触れるための場であり、見知らぬ者同士が悩みや喜びを分かち合い、互いの内面と向き合う時間を持つための空間でもある。

私が今回映像で捉えようとしているのは、儀式や祈りそのものだけではない
祈りの言葉、所作、巡礼道や宿という空間、そしてもてなしのあり方――それらがどのように結びつき、信仰文化を形づくっているのか。その全体像だ。とりわけ、末裔たちが信仰を受け継ぐ際に抱く「言葉にならない思い」に注目している。インタビューの沈黙や、共同作業の手つき、環境音を含めた長時間の定点撮影を通じて、言語だけでは捉えきれない継承のかたちを浮かび上がらせたい。

日本の原風景が色濃く残る奈留島。船廻湾を望むこの地で、過去から現在、そして未来へと連なる信仰の営みを、今回もまたカメラを通して見つめてくる。

奈留港

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