【今日のタブチ】「罰」とは社会から切り離すこと、「更生」とは再び社会とつなぎ直すこと――浦和レッズ“日本初の挑戦”と私が宮川医療少年院で見た“信じられない光景”
サッカーJ1の浦和レッズが素晴らしい取り組みを始めた。
埼玉県の川越少年刑務所と連携し、サッカーを通じて受刑者の更生と社会復帰を支援するプロジェクトをスタートさせたのだ。FIFA財団、JFA、法務省矯正局なども連携する日本初の試みである。
このプロジェクトは単なるサッカー教室ではない。
受刑者にサッカーを教えることが目的ではなく、コミュニケーション能力や計画立案力、アンガーマネジメントなどを身につけてもらうことが狙いだという。
対象となるのは主に10代から20代の若い受刑者たち。元浦和レッズ選手らがコーチとなり、講義や実技を通じてチームワークや相手を尊重する姿勢を学んでもらう。実際に参加した20代男性受刑者は「思いやりが生活のなかでも大切だと改めて感じることができた」と語っている。
この取り組みは「Twinning Project」と呼ばれるもので、刑務所と地域のプロサッカークラブを“ペア(双子)”のように結びつけて受刑者の社会復帰を支援する、イギリス発の更生プログラムがベースになっている。
日本の矯正は、犯罪を犯した人を社会から隔離し、反省を促すことに重点が置かれてきた。一方、このTwinning Projectの発想はその逆だ。刑務所の中にいる段階から地域社会との接点を作り、社会復帰への橋を架けようという考え方なのである。だからこそ受刑者は、サッカーの技術だけでなく、他者との関わり方やチームの一員としての役割を学ぶことになる。
FIFAによれば、イギリスではすでに刑務所で実施されており、収監中のトラブルや懲罰対象行為の減少などの効果が確認されているという。さらに参加者の自信やコミュニケーション能力、精神的な回復力(レジリエンス)の向上にもつながっているとされる。
ぜひ日本全国へ広がってほしい取り組みだと思う。
もちろん犯罪被害者の苦しみは絶対に忘れてはならない。しかし再犯防止を本気で考えるのであれば、「罰を与えること」と同時に「社会に戻るための力を育てること」も必要だ。
今回のニュースを読みながら、私はNNNドキュメント『障害プラスα~自閉症スペクトラムと少年事件の間に~』の取材で訪れた宮川医療少年院のことを思い出していた。
ここは発達障害や知的障害、精神的な課題などを抱えた少年たちが収容される医療少年院だ。取材を通して感じたのは、彼らが単純に「悪いことをしたい」と思っていたわけではないということだった。もちろん犯罪は犯罪であり、責任は負わなければならない。しかし、その背景には、相手の気持ちを想像することが苦手だったり、自分の感情をうまくコントロールできなかったり、社会のルールを十分理解できていなかったりするケースが少なくなかった。
宮川医療少年院では「コグトレ」と呼ばれるトレーニングも行われていた。立命館大学教授の宮口幸治氏が考案したもので、認知機能や社会性を高めることを目的としている。相手の表情を読み取る力、状況を理解する力、先を予測する力などを養うプログラムだ。
当時の私は半信半疑だった。認知能力を高めるトレーニングが、本当に少年たちを変えることができるのだろうか、と。
だが、私は取材しているうちに、信じられない光景に遭遇する。何度かそのプログラムをおこなうことで、子どもたちの認知能力が格段に上がっていったのである。
私は今回の浦和レッズの取り組みを見ながら、このコグトレとの共通点を感じた。
サッカーは単なるスポーツではない。味方の位置を見なければならない。相手の動きを予測しなければならない。ルールを守らなければならない。感情が高ぶっても冷静さを失ってはいけない。そして何より、自分勝手なプレーではチームは成り立たない。
そこには「他者を理解する」という営みが凝縮されている。
だからこそ、受刑者の口から「思いやりが大切だと感じた」という言葉が出てきたのだろう。
私は更生とは、反省文を何枚書くかではないと思っている。
他者を理解する力をどれだけ身につけられるか。社会のなかで生きるための力をどれだけ取り戻せるか。そこに更生の本質があるのではないだろうか。
犯罪が起きると、私たちはつい「本人の責任だ」「もっと厳しく罰すべきだ」と考えがちだ。もちろんそれは間違いではない。
しかし、なぜその人は罪を犯してしまったのか。そこに認知の問題はなかったのか。発達障害や知的障害、生育環境の問題はなかったのか。周囲の大人たちはそのSOSに気づけていたのか。そんな視点も同時に必要だと思う。
浦和レッズが教えているのは、人と関わる方法であり、社会のなかで生きていく方法なのだ。
「罰」とは社会から切り離すことかもしれない。しかし「更生」とは、再び社会とつなぎ直すことだ。
この日本初の挑戦が、日本全国へ広がっていくことを期待したい。
「プレスリリースジェーピー」HPより


