【今日のタブチ】ジャングリア沖縄173億円赤字――なぜ沖縄に巨大テーマパークが必要だったのか

ジャングリア沖縄が約173億円の最終赤字を計上し、新たな出資者を探す方向だというニュースが報じられた。
ジャングリア沖縄とは、沖縄県北部に開業した大型テーマパークである。USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)の経営再建で知られるマーケターの森岡毅氏らが手がけ、「大自然没入型テーマパーク」をコンセプトに大々的な宣伝が行われてきた。恐竜をテーマにしたアトラクションや気球体験などを売りにし、沖縄観光の新たな目玉として期待を集めていた。
総事業費は約700億円ともいわれる巨大プロジェクトで、地元企業や金融機関に加え、公的な金融機関も資金面で関わってきた。
ところが今回、2026年6月期決算で約173億円の最終赤字が明らかになり、新たな出資者探しが始まるという。
もちろん、私は赤字になったから問題だと言いたいわけではない。こうした大型開発は、開業直後から黒字になるほうが珍しい。テーマパーク事業は初期投資が莫大であり、回収にも時間がかかる。
だが、このニュースを見ながら、私は開業前から抱いていた疑問を思い出していた。

そもそも、なぜ沖縄に巨大テーマパークだったのか。

昨年、ジャングリア沖縄の開業が大きな話題になっていた頃、我が家は家族で沖縄旅行に出かける予定だった。話題の施設だから、一度行ってみるか。そんな話になったのは自然な流れだった。
しかし、私はどうしても気が進まなかった。なぜなら、沖縄まで行って人工的に造られたジャングルを見る必要があるのだろうか、と思ったからである。
沖縄には本物の自然がある。本物の海がある。やんばるの森がある。独自の歴史があり、独自の文化があり、本土とは異なる時間の流れがある。だから私は沖縄へ行くたびに、その土地にしかないものに触れることに価値を感じる。それなのに、沖縄で人工的なジャングルを体験する。どうしても、その発想が腑に落ちなかった。
当時は言葉にできなかったが、今振り返れば、私は沖縄が沖縄でなくなってしまうような感覚を覚えていたのだと思う。
沖縄の魅力を磨くのではなく、どこか別の場所でも成立する娯楽施設を持ち込む。そんな印象を受けたのである。

もう一つ引っかかったのが、「USJ再建チームが手がける」という宣伝文句だった。もちろん、森岡氏らの実績は否定しない。USJをV字回復させた手腕は高く評価されているし、その経験を買われたからこそ今回のプロジェクトも実現したのだろう。
しかし、私にはその宣伝文句があまり魅力的には聞こえなかった。
なぜなら、「沖縄をどうするか」よりも、「どう成功させるか」が前面に出ているように感じられたからである。
観光地づくりとは、本来、その土地への敬意から始まるべきではないか。
その土地の魅力は何なのか。何を残し、何を伝えるべきなのか。まずそれを考える。その結果として事業が生まれる。私はそう考えている。もちろん、森岡氏とそのチームにそういったリスペクトがなかったとは思わない。だが、その気持ちより優先されたものがあったのではないかと危惧するのだ。

今回の赤字の原因については、専門家がさまざまな分析をするだろう。
集客計画の問題かもしれない。建設費や人件費の高騰かもしれない。立地の問題もあるかもしれない。
しかし、私は、数字の分析以上に考えなければならないことがあると思う。
人々は本当に沖縄に何を求めていたのか、ということである。
世界では現在もテーマパークや巨大エンターテインメント施設の建設ラッシュが続いている。例えばサウジアラビアでは、世界的な人気を誇る日本の漫画・アニメ『ドラゴンボール』の世界初となるテーマパークの建設計画が進められている。世界中に熱狂的なファンを持つコンテンツなのだから、その世界を現実空間で体験したいという需要があることは理解できる。
だが、ジャングリア沖縄はどうだったのだろうか。沖縄の魅力をさらに磨く方向ではなく、テーマパークという成功モデルを持ち込むことが目的になってはいなかっただろうか。
世界中の観光地が同時に直面している課題もある。それは、「その土地らしさ」が失われていくことだ。どこへ行っても同じような商業施設があり、同じようなチェーン店があり、同じようなアミューズメント施設がある。それでは、その土地へわざわざ足を運ぶ意味が薄れてしまう。
地域振興とは、その土地を別の何かに変えることなのだろうか。それとも、その土地が持っている価値を磨き上げることなのだろうか。
私は後者だと思う。沖縄には沖縄の価値がある。本物の海があり、本物の自然があり、本物の文化がある。人々が沖縄を訪れる理由も、そこにあるはずだ。

今回の173億円赤字は、単なる経営上の失敗や成功の話ではない。
沖縄の未来をどう考えるのか。地域振興とは何なのか。そして、観光地にとって本当に必要なものは何なのか。
沖縄の問題だから、自分たちには関係ないと思う人もいるかもしれない。しかし、私はそうは思わない。辺野古問題にしてもそうだ。沖縄で起きていることだからと本土の人間が無関心でいていい話ではない。沖縄は日本の一部であり、そこで行われる開発や政策の影響は、最終的には私たち国民全体の問題として返ってくる。
ジャングリア沖縄も同じである。そこに公的な資金が関わり、沖縄の未来の姿を左右する事業である以上、「沖縄の話」で済ませてはならない。
沖縄の価値とは何なのか。地域振興とは何なのか。そして、その土地らしさを守りながら発展するとはどういうことなのか。
今回のニュースは、そんなことを国民全体で考える機会を私たちに与えているように思う。

Voicyでは、昨日の「脚本や原作に対するリスペクト」と同じだという視点で、この問題を話しています。ぜひお聞きください!
#063 ジャングリア沖縄173億円赤字で考えた「脚本への敬意」と「土地への敬意」
https://voicy.jp/channel/1027821/8255556

「テレ東Biz」より

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