【今日の新聞から】「AIあんの」が都知事選に残した大きな傷跡~「デジタル・シチズンシップ」という新しい夜明けを歓迎する
先週の日曜日7月7日に行われた東京都知事選挙。結果は現職・小池百合子氏が42.8%を占める約292万票を獲得、3選を果たした。2番手に前安芸高田市長の石丸伸二氏、元参議院議員・蓮舫氏は3番手、元航空幕僚長の田母神俊雄氏が4番手だった。
そしてこれに続く5番手になったのが、政治の世界でまったく無名だったAIエンジニア・安野貴博氏だ。安野氏は約15万票を得るという結果を残した。この功績はその数字以上に大きな意味を持つと私は考える。テクノロジーの力で誰も取り残さない東京を作るという目標の「デジタル・シチズンシップ(デジタル民主主義)」を掲げ、「AIあんの」を駆使して「参加型マニフェスト」を次々と打ち出したからだ。
安野氏の出現は、台湾のオードリー・タン氏を喚起させられる。タン氏は台湾(国籍は中国)の政治家でありながら、「台湾のコンピューター界における偉大な10人の中の1人」と称される天才プログラマーだ。シリコンバレーでソフトウエア会社を創業したり、米アップルの顧問として人工知能「Siri」プロジェクトに加わっていたことでも知られている。自ら不登校児だったことやトランスジェンダーで中性的な名前に変えたことを公表している。2016年には35歳という若さで、台湾のIT担当大臣に任命された。新型コロナウイルスが猛威を振るっていた際に、その感染対策にAIを活用していたことでご存知の方も多いのではないだろうか。
このタン氏が登場したときには、「遂にそういう時代がやってきたか」と思ったが、まさに今回の安野氏の登場もそういった思いを抱かされるものだ。
そして、これは「新しいかたちの政治」としてとても素晴らしい試みだと感じている。何よりも「若者離れ」と言われる政治に若い世代の興味を向かせるという効果がある。AIアバターが繰り出す想定質問や政策は、もちろん、鵜呑みにしてはいけない。そういうことをちゃんとわかったリテラシーを持ちながらうまくAIを活用していけば、さらに新しい「デジタル・シチズンシップ」が可能になるだろう。
「ABEMA NEWS」より