【今日のタブチ】巨人軍・阿部監督辞任の“不自然さ”…なぜ報道は「意外だった」の声ばかり拾うのか

巨人軍の阿部慎之助監督が辞任に追い込まれた一連の問題は、ここ数日で一気に“断罪の空気”へと変わった。

経緯自体はシンプルだ。
家庭内での出来事が報じられ、それを受けて謝罪、そして監督辞任へと至る。ネット上では事実関係の精査が進むよりも早く、「アウト」「ありえない」「指導者失格」という声が増幅していった。
さらに問題なのは、本人ではなく家族、特に娘に対する誹謗中傷まで飛び交っている点だ。これは論外であり、議論の余地はない。

ただ、私が今回どうしても引っかかるのはそこではない。
むしろ、その先にある“メディアの作り方”だ。

まず、街頭インタビューの違和感。
テレビを見ていると、『意外だった』『ショックだった』というコメントが目立つ構成になっているように見える。
しかし本当にそれだけだったのか。
例えば、「昭和的な気質の人だから、そういう面が出たのかもしれない」、あるいは「良くないとは思うが、人間だから感情的になることもある」などの“完全否定ではない声”は、あまり表に出てきていない印象を受ける。
これは偶然というより、編集の結果そう見えている可能性がある。

インタビューというのは、基本的に大量に集めた素材から切り取られる。テレビ業界の構造として、街頭インタビューは欲しいコメントに合う人が出るまで繰り返すし、ターゲットや結論を先に決めて取りに行く
結果として「これはこういう空気なのだ」という印象が先に立つ構成になっている。
今回で言えば、「驚き」「失望」「断罪」。このフレームに合うコメントだけが採用される。結果として、視聴者は「世の中はみんなこう思っている」と錯覚する
だが実態は違う可能性が高い。

次に、写真の問題。
新聞やニュースサイトでは、阿部氏が涙を流して謝罪している場面が象徴的に使用されている
もちろん、反省の意思を伝える意味でそれは理解できる。
だが、それ“だけ”が強調されていいのか。

人間の表情は一瞬ではない。
記者会見の中には真顔のカットもあれば、厳しい表情も、言葉に詰まる場面もあるはずだ。にもかかわらず、「涙」の瞬間が強く印象づけられる形で使われる。これは単なる“印象操作”という言葉では片づけられない。むしろ、出来事を“物語”として成立させる編集に近い。
つまり、今回の阿部氏は「反省している人物」ではなく、「反省している姿を見せることで物語が完成する人物」として扱われているということだ。
いわゆる、“ドラマトゥルギー”としての役割を決められているのだ。

ここには、報道の“物語化”が起きている。
さらに言えば、記事の論調は結果として似た方向に揃っているように見える。
「監督にあるまじき行為」
「冷静さを欠いた判断」
「指導者としての資質が問われる」

どれも正論ではある。ただ、その正論が前面に出すぎている印象も否めない。

人間は聖人君子ではない。
怒ることもあれば、感情が先に立つこともある。もちろん暴力や不適切な行動は否定されるべきだが、だからといって「常に完全であれ」という論調に振り切るのは現実離れしている
そしてもう一つ、今回の最大の違和感。

家庭内の問題に対して、ここまで外部が踏み込むべきなのか、という点だ。
家庭内暴力や虐待については、社会が声を上げる必要がある。それは大前提だ。
だが、今回のケースはそこまで明確な構図なのか。断片的な情報をもとに、一方的に“加害と断定”していいのか。
このグレーな領域が、一切議論されていない。すべてが「黒」として処理されている。

なぜ、こうなるのか。

答えは単純だ。その方が数字になる構造が、すでに出来上がっているからだ。
強い言葉、分かりやすい善悪、涙の写真。これらは視聴率を取り、クリックを増やし、部数を伸ばす
逆に、「状況を見ないと分からない」「評価が分かれる」という話は、数字にならない。

だから、切り捨てられる。

結果として、社会全体が“単純化された感情”だけで動く構造が出来上がる。
騒ぎすぎ、煽りすぎ、責めすぎ。それは単に人々が過激だからではない。
結果として、そういう空気が“作られているように見える”からだ。

今回の件をどう評価するかは人それぞれでいい。
ただ、その判断材料が偏っているとすれば、そこには一度立ち止まる必要がある。
本当にそれは、事実を見た上での意見なのか。それとも、編集された空気を受け取っているだけなのか
私は、後者の可能性を強く感じている。
そして、その前提で読み直すと、今回の報道の見え方は大きく変わる。

メディアは多様であるべきだ。
今回の一辺倒の報道に対するこの違和感は、決して私一人のものではないはずだ。

「テレ朝NEWS」より

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