【今日のタブチ】高市首相のICC支持表明――私が思い出した「みんなの前では否定するからね」というテレ東大先輩の言葉
国連の場で、トランプ米大統領がICC(国際刑事裁判所)への批判的な姿勢を示し、それに対して高市首相がICC支持を表明したというニュースを見た。
私は高市首相の対応については一定の評価をしている。国際社会における法の支配や国際秩序という観点から考えれば、日本の首相がICC支持の姿勢を打ち出したことには意味があるだろう。
しかし、このニュースを見ていて、私はあることを思い出した。それはテレビ東京時代の大先輩とのやり取りである。
その先輩は、会議の前になるとよく私にこう言っていた。
「たぶっちゃん、みんなの前では否定するからね」
そして実際に会議が始まると、私の企画や意見に厳しい反対意見を述べるのである。
若かった私は複雑な気持ちだった。なぜそんなことをするのだろう。もし支持してくれているなら、正面から応援してくれればいいではないか。本当は私のことが気に入らないのだろうか。
ところが会議が終わり、二人きりになると、その先輩は必ずこう言うのだった。
「僕は君の味方だよ」
そして、「でも、あの場で露骨に君を支持すると、みんなが反発するからね」「これは演出なんだよ」と言葉を続けた。
当時の私は完全には理解できなかった。だが、社会人としてさまざまな経験を積む中で、組織というものにはそうした振る舞いが存在することを知った。
表向きの態度と、本音の立場が必ずしも一致するとは限らない。
もちろん、それが良いことか悪いことかは別問題である。しかし、現実にはそういうことがある。だから今回のニュースを見ながら、私はつい想像してしまった。
もちろん、これから書くことは何の証拠もない。あくまでも私自身の経験や記憶から生まれた推察に過ぎない。
それでも、トランプ氏と高市首相の間で、
「とりあえず否定しておいて」
あるいは、
「支持表明だけは出させていただきます」
そんなやり取りがあった可能性を、果たして誰が完全に否定できるだろうか。
トランプ氏が言ったのかもしれない。高市氏が言ったのかもしれない。あるいは、そんな会話自体は存在しなくとも、暗黙の了解だったのかもしれない。
もちろん、私には事実は分からない。ただ私には、これまで見てきた高市氏の政治的な行動や発言の積み重ねを考えると、今回の対応が少々意外に映ったのである。そして、ここまで考えたところで、私は最近別の分野でも似たようなことを感じていたことに気がついた。
AIである。
近年のAI開発競争は凄まじい。各社が巨額の資金を投入し、性能競争を繰り広げている。そんな中で、一部のAI企業の経営陣からは「開発速度を抑えるべきだ」「慎重に進めるべきだ」といった発言が聞こえてくる。
もちろん、それが本心である可能性は十分ある。AIが社会に与える影響を考えれば、安全性を重視するのは当然のことでもある。
しかし、私は、少し別の見方もしてしまう。
過熱し過ぎた競争をいったん冷却しようとしているのではないか。
バブル的な熱狂が暴走する前に、少しペースを落とそうとしているのではないか。
あるいは、自らブレーキを踏んでいるように見せながら、その間に次の一手を準備しているのではないか。
そんな見方もできるように思えるのである。
もちろん、これも推察に過ぎない。事実かどうかは分からない。しかし、政治でもAIでも、表に出ている発言や行動だけを見て判断すると、物事の半分しか見えないことがある。
人は時として、本音とは異なる言葉を発する。
組織は時として、別の目的のために異なるメッセージを発信する。
対立しているように見える人同士が、実は別のレベルでは利害を共有していることもある。
私は何も陰謀論を語りたいのではない。ただ、世の中の出来事に接したとき、「本当にそうなのだろうか」と一歩立ち止まって考えてみることは大切だと思うのである。
表面に見えているものだけではなく、その背後に別の可能性はないのか。
別の説明は成り立たないのか。
そう問い続けることこそが、政治を考えるうえでも、AIの未来を考えるうえでも、そして私たちが情報社会を生き抜くうえでも必要な姿勢なのではないだろうか。
Voicyでは、こういった現象を今の社会を生き抜くためにどう生かしてゆくべきかをお話ししています!ぜひお聞きください!
#057 「みんなの前では否定するからね」テレ東大先輩が教えてくれたこと
https://voicy.jp/channel/1027821/8229643
「西日本新聞me」より



