【今日のタブチ】「よくあらねば」の呪いから自由に――ヘボコンが教えてくれた“挑戦すること”の本質
ロボコンは有名だが、「ヘボコン」をご存じだろうか。
ロボット製作の経験に乏しい素人たちが、不完全で思い通りに動かない“ポンコツロボット”を持ち寄って競う大会である。勝敗よりも失敗や珍プレーを楽しむのが特徴で、主催する石川大樹氏によれば、アメリカ、中国、ドイツ、フィリピンなど約30カ国にも広がっているという。先日の東京新聞「こちら特報部」で紹介されていた。記事の中で私の心に深く刺さったのは、石川氏のこんな言葉だった。
「日本社会には、何事もよくあらねばならないという『呪い』があり、挑戦の足かせになっている」
「新しいことをやるときは誰しもがヘボい。その状態を楽しむことが人生の豊かさにつながる」
なるほどと思った。
今の日本社会は失敗に厳しい。挑戦する前から「うまくできるのか」「恥をかかないか」「笑われないか」を気にしてしまう。その結果、やってみたいことがあっても、一歩目を踏み出せなくなる。しかし、考えてみれば、新しいことに挑戦するときは誰だって初心者だ。最初から上手くできる人などいない。そんな当たり前のことを忘れさせるのが、「よくあらねばならない」という呪いなのかもしれない。
私が大学で学生たちに繰り返し伝えているのも、まさに同じことである。まずはやってみよう。失敗してもいい。うまくいかなければ修正すればいい。
いわば「Try&Error」の精神である。
ところが学生たちは、しばしば「正解」を求めたがる。失敗を恐れ、完成形が見えてから動こうとする。しかし、新しい表現や映像制作、企画づくりにおいて、最初から正解が見えることなどほとんどない。だから私は、まず動くことの大切さを伝えている。
その意味で、ヘボコンの思想は教育そのものにも通じていると思った。
私はこの記事を読みながら、20年以上前のロボコンの思い出を思い出していた。2004年11月放送の「アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト関東・甲信越大会」で、私は演出を担当した。当時、私はテレビ東京の社員だったが、NHKの知り合いから依頼を受け、制作会社であるテレビ東京制作に出向していたので実現が可能だったのだ。私はNHKの中継車に乗り込み、会場からの生中継の指揮を執った。
そのとき、技術スタッフから、「他局の人がNHKの中継車に乗ったのは初めてですよ」と言われたことを今でも鮮明に覚えている。
会場には独特の熱気があった。高専生たちは何カ月もかけてロボットを作り上げ、その成果を競技の数分間に懸ける。ロボットが思い通りに動けば歓声が上がる。故障すれば会場全体が固唾をのんで見守る。そこにはものづくりに青春を懸ける学生たちの情熱があった。
私は中継車の中からその光景を見つめながら、ロボットの性能だけではなく、挑戦する姿そのものに胸を打たれていた。そして今、ヘボコンの記事を読んで改めて思う。
高専ロボコンとヘボコンは正反対に見えて、実は根っこの部分は同じなのではないか。
高専ロボコンは高度な技術を目指す。ヘボコンはヘボい技術を楽しむ。一見すると真逆である。だが、どちらにも共通しているのは、「まずやってみる」という精神だ。私が大学で学生たちに伝えているTry&Errorの考え方も、その延長線上にある。
完璧だから挑戦するのではない。挑戦するから成長する。ヘボコンが世界30カ国に広がった理由も、そこにあるのだろう。
不格好でもいい。不完全でもいい。思い通りに動かなくてもいい。まず作ってみる。まず挑戦してみる。その先にしか見えない景色がある。
石川氏の言葉は、ロボット競技の話にとどまらない。学生にも、社会人にも、そして私自身にも向けられたメッセージのように聞こえた。
ヘボコンで競われているのはロボットではない。挑戦する勇気そのものなのである。
Voicyでは、高専ロボコンでの私の貴重な経験と現在の教育にどう生かしているかを中心にお話ししています!
ぜひお聞きください!
#055 ロボコンとヘボコン、その共通点は「まずやってみる」だった
https://voicy.jp/channel/1027821/8225700
「Wired Japan」HPより



